プーチンの戦争:なぜウクライナに侵攻したのか?本当の動機と“操り人形説”
- UNREASH
- 4月27日
- 読了時間: 12分
「なぜ、プーチンはウクライナへの全面侵攻という暴挙に踏み切ったのか?」
2022年2月24日、ロシア軍がウクライナの国境を越えた瞬間、世界は息をのみました。その衝撃と混乱は、2年以上が経過した今(2025年4月現在)も続いています。プーチン大統領が語る「NATOの脅威」「ネオナチからの解放」…それらは本当に、この戦争の唯一の理由なのでしょうか?あるいは、プーチンが何らかの「裏組織」(ディープステートのような)に操られている可能性はないのか?それとも、彼の心の奥底には、私たちには計り知れない個人的な野望や怨念が渦巻いているのでしょうか?
この記事では、この現代史における重大な問い**『プーチンの戦争はなぜ始まった』**の答えを探るべく、
プーチン自身が語る「大義名分」とその裏側
「強いロシア」復活への野望と地政学的な計算
彼を突き動かす独特な「歴史観」と「イデオロギー」
クレムリンの権力構造と「操り人形説」の真偽
KGB出身という経歴、そしてプーチン個人の心理
など、複雑に絡み合う要因を一つ一つ紐解き、可能な限りその真相に迫ります。表面的なニュースだけでは見えてこない、戦争の深層を一緒に探求しましょう。

目次
プーチンが語る「大義名分」:その言葉を鵜呑みにしてはいけない?
まず、プーチン大統領自身が、この戦争(彼らが言うところの「特別軍事作戦」)を始めた理由として、公式に何を語ってきたかを見てみましょう。
NATOが脅威だ!
最も繰り返し主張されるのが、NATO(北大西洋条約機構)の東方への拡大がロシアの安全を脅かしている、という論理です。「すぐ隣のウクライナまでNATOが迫ってくるのは絶対に許せない」「ロシアを封じ込めようとしている!」と強く反発しています。
ウクライナを「非ナチ化」する!
ウクライナの現政権を「ネオナチ」と断じ、打倒することが作戦の目的の一つだと主張しました。特に、ウクライナ東部のロシア語話者が「ジェノサイド(集団虐殺)」されている、とまで言い切り、彼らを救うためだ、としています。(※この「ネオナチ」「ジェノサイド」という主張には、国際社会から強い疑問と批判が寄せられています。)
ロシアとウクライナは「一つの民族」だ!
プーチン氏は、歴史的にロシアとウクライナは一体であり、現代のウクライナという国家は、ソ連時代に人為的に作られたもので、真の主権はない、という独特の歴史観を持っています。ウクライナの独立や西側への接近は、この「歴史的一体性」を破壊するものだと考えているようです。
同胞を守る!
上記と関連し、ウクライナ国内のロシア系住民やロシア語話者を「同胞」と呼び、彼らをウクライナ政府の「迫害」から守る必要がある、と主張します。
悪いのは西側だ!
そもそもこの紛争を引き起こしたのは西側諸国であり、ロシアはそれを終わらせるために行動しているのだ、という驚くべき主張もしています。
これらの理由は、ロシア国内向け、そして一部の国際社会に向けて、**侵攻を正当化するための「物語」**として繰り返し語られています。安全保障、歴史、人道といった様々な側面から、ロシアの行動が「防衛的」で「やむを得ない」ものであったかのように見せようとしているのです。しかし、これらの主張の多くは、客観的な事実とは異なる点や、歴史解釈に大きな偏りがあることが指摘されています。
例えば、「ジェノサイド」の主張には具体的な証拠がありませんし、ウクライナの主権を否定する歴史観は国際的に認められていません。また、侵攻当初は「領土占領が目的ではない」と言いながら、後に複数の州を一方的に併合するなど、言動に矛盾も見られます。
したがって、プーチン氏の語る「大義名分」は、彼の本心の一部を反映している可能性はあるものの、そのまま鵜呑みにすることは非常に危険です。むしろ、彼の真の動機を覆い隠すための**プロパガンダ(政治宣伝)**としての側面が強いと考えるべきでしょう。
「強いロシア」への渇望:地政学と勢力圏という名の野望
では、プロパガンダの裏にある、より現実的な「動機」は何でしょうか?多くの専門家が指摘するのが、地政学的な野心、つまり**「強いロシア」を復活させたい**というプーチン氏と彼を取り巻くエリート層の強い願望です。
NATO拡大への本物の「恐怖」と「反発」
プロパガンダとして利用される側面はあれど、ロシアがNATOの東方拡大を自国の安全保障に対する深刻な脅威と捉えていることは事実でしょう。特に、ウクライナのような隣接する大国がNATOに加盟することは、軍事的な緩衝地帯を失い、西側の軍事力が国境線まで迫ることを意味します。これを何としてでも阻止したい、可能ならNATOを冷戦前の状態に押し戻したい、というのが、プーチン氏の長年の悲願であったと考えられます。
失われた「勢力圏」の回復
ソ連崩壊後、かつての影響圏にあった国々が次々と西側へ接近していく状況は、プーチン氏にとって「歴史的な屈辱」であり、ロシアの国際的地位の低下と映ったのかもしれません。彼は、ウクライナを含む旧ソ連諸国を、ロシアが影響力を持つべき「特別な領域」と見なしており、これらの国々が西側の軍事同盟(NATO)や経済圏(EU)に入ることを、断固として阻止しようとしているのです。ウクライナを、ベラルーシのようなロシアに従属する国家にすることが、彼の目標の一つであった可能性は高いでしょう。
アメリカ一極支配への挑戦
冷戦終結後、アメリカが唯一の超大国として世界を主導してきた状況に対し、プーチン氏は強い不満を抱いてきました。彼は、ロシアが再び世界の主要プレイヤーとして影響力を持つ**「多極的な世界秩序」の実現を目指しており、ウクライナ侵攻は、そのための力による現状変更の試み**、アメリカ主導の秩序への挑戦、という側面も持っています。
このように、プーチン氏の行動の背景には、ロシアの安全保障上の懸念(と彼らが認識するもの)と、かつての「大国ロシア」の栄光を取り戻したいという、極めて現実的な地政学的な野心が存在すると考えられています。
歴史とイデオロギーの呪縛:プーチンを突き動かす「世界観」
プーチン氏の行動を理解する上で、彼の持つ独特な**「歴史観」と「イデオロギー(思想・信念)」**を無視することはできません。これらは、地政学的な野心と密接に結びつき、侵攻を正当化する強力な内的動機となっています。
「ロシアとウクライナは一つ」という歴史認識
プーチン氏は、様々な演説や論文で、ロシア人とウクライナ人は言語も文化も宗教も共有する**「一つの民族」**であり、ウクライナという独立国家は歴史的に見て不自然な存在である、という主張を繰り返しています。この歴史観に基づけば、ウクライナをロシアの影響下に置くことは、いわば「歴史の修正」であり、正当な行為である、ということになります。(もちろん、ウクライナ側はこの歴史観を完全に否定しています。)
「ロシア世界(ルースキー・ミール)」という構想
これは国境を越えて、ロシア語を話し、ロシア文化やロシア正教を共有する人々や地域を、一つの精神的な共同体**「ロシア世界」**として捉える考え方です。この思想は、旧ソ連諸国に住むロシア系住民の「保護」を口実に、それらの国々への介入を正当化する論理として利用されることがあります。
西側リベラルへの強い敵意
プーチン氏は、民主主義、個人の自由、LGBTQの権利といった西側のリベラルな価値観に対して、強い嫌悪感と敵意を持っていると見られています。彼は、これらの価値観がロシアの伝統的な価値観や社会秩序を破壊する脅威であると考えているのかもしれません。ウクライナが西側的な価値観を受け入れ、民主化を進めること自体が、彼自身の権威主義的な体制への脅威と映っている可能性もあります。
ロシア例外主義とメシア(救世主)意識?
ロシアは欧米とは異なる独自の文明であり、世界において特別な使命を持っている、という**「ロシア例外主義」**的な思想も、プーチン氏の世界観の根底にあると言われます。もしかしたら彼は、自らを、西側の堕落からロシア(そして世界?)を救う指導者だと考えているのかもしれません…。
これらの歴史観やイデオロギーは、客観的に見れば歪んでいたり、時代錯誤的であったりする部分も多いかもしれません。しかし、プーチン氏自身がこれらを強く信じているとすれば、それがウクライナ侵攻という過激な行動を正当化し、突き動かす大きな力となっている可能性は十分にあります。
クレムリンの権力闘争?「操り人形説」とシロヴィキの影
「プーチンは、実は裏で誰かに操られているのでは?」「ディープステートのような、真の権力者が別にいるのでは?」こうした**「操り人形説」も、まことしやかに囁かれます。特に、長年プーチン政権を支えてきたとされる「シロヴィキ」**と呼ばれる存在が、その黒幕ではないか、という見方です。
「シロヴィキ」とは?
ロシア語で「力の人々」を意味し、**軍、諜報機関(FSB、SVRなど)、治安機関(国家親衛軍、内務省など)といった、武力・権力機関の出身者や関係者を指す言葉です。プーチン政権では、多くのシロヴィキ出身者が政権の中枢や国営企業の要職を占めており、強い影響力を持っていることは事実です。特に、大統領の警護や情報収集を担うFSO(連邦警護庁)**は、プーチン氏への情報アクセスをコントロールし、意思決定に深く関与しているとも言われています。
彼らはプーチンを操っているのか?
ではこのシロヴィキが、プーチン大統領を陰で操っているのでしょうか?現在のところ、それを裏付ける確かな証拠はありません。むしろ、ロシアの権力構造はプーチン大統領個人に極度に集中しており、シロヴィキを含む他のエリートたちの影響力は、大統領への忠誠心と近さに依存している、と見るのが一般的です。シロヴィキは重要な助言者であり、政策実行部隊ではありますが、最終的な決定権はプーチン氏が握っていると考えられます。シロヴィキ内部にも派閥争いがあるとも言われ、一枚岩の「裏組織」が全てを支配している、という見方は現実的ではありません。
「エコーチェンバー」の危険性
しかし、シロヴィキの影響力が全くないわけではありません。問題は、権力が集中し、大統領が自分に忠実な、似たような考えを持つ側近(特にシロヴィキ)ばかりで周りを固めてしまうことです。そうなると、大統領にとって耳の痛い情報や、異なる意見が届きにくくなる「エコーチェンバー」状態に陥る危険性があります。側近たちは、大統領の意向に沿うような情報や、自分たちの組織に都合の良い情報ばかりを上げるイエスマンになります(現トランプ政権や中国・北朝鮮みたいに)。これが、プーチン氏の状況認識を歪め、ウクライナ侵攻のような致命的な「誤算」(ウクライナの抵抗力や西側の結束を甘く見たことなど)に繋がったのではないか、という分析は非常に重要です。
つまり、「操り人形」ではないにしても、プーチン氏を取り巻く権力構造と情報環境そのものが、彼の判断を誤らせる方向に作用した可能性は否定できないのです。
プーチン個人の「心」を探る:KGB・屈辱・矛盾・そして野心
国家の指導者もまた、一人の人間です。プーチン氏個人の経歴や心理が、今回の決断に影響を与えた可能性も考える必要があります。
KGB出身という「原点」
プーチン氏のキャリアの原点は、旧ソ連の諜報機関KGBにあります。少年時代からスパイに憧れ、大学卒業後にKGBに入り、冷戦下の東ドイツで活動しました。この経験は、彼の思考様式や世界観に計り知れない影響を与えたはずです。国家安全保障への強い執着、西側への根深い不信感、目的のためには手段を選ばない冷徹さ、情報操作や秘密工作への親和性…こうしたKGB的なマインドセットが、彼の行動の根底にあるのは間違いないでしょう。
ソ連崩壊と「屈辱」の記憶
KGB職員として東ドイツでベルリンの壁崩壊とソ連崩壊という「敗北」を目の当たりにした経験は、彼に深い「屈辱感」を刻み込んだと言われています。1990年代のロシアの混乱と、西側から「敗者」として扱われた(と彼が感じた)経験も、その感情を増幅させたでしょう。この屈辱感が、「強いロシア」を復活させ、西側に見返してやりたいという強い動機に繋がっている可能性があります。
歴史への執着と「使命感」
プーチン氏は、自らをピョートル大帝のような、ロシアの偉大さを取り戻す歴史的な使命を帯びた指導者と位置づけている節があります。彼の独特な歴史観(特にロシア・ウクライナ一体論)も、この使命感を補強しているのかもしれません。
犬や子供に見せる「優しさ」との矛盾?
日本の過去のニュース映像やSNSなどで時折見せる、犬と戯れたり、子供に優しく接したりする姿。これと、戦争指導者としての冷酷な決断とのギャップに、多くの人が戸惑いを感じます。これはどう解釈すればいいのでしょうか?一つには、政治家としてのイメージ戦略という側面があるでしょう。しかし、それだけではないかもしれません。人間は誰しも多面的な存在です。彼は、**個人的な領域での感情と、国家指導者としての冷徹な判断とを、完全に切り離して考える(区別化する)**ことができるのかもしれません。もし彼が、戦争を「国家の生存と偉大さの回復のために、避けられない必要な悪」だと本気で信じているならば、その決断は、彼の中では個人的な感情や道徳とは別の次元で行われている…そう考えることも可能です。KGBでの経験が、そうした精神構造を形成したのかもしれません。
もちろん、これらは外部からの推測に過ぎません。しかし、プーチン氏という一人の人間の持つ複雑な心理やトラウマが、この歴史的な悲劇の引き金の一つとなった可能性は、十分に考慮に値するでしょう。
結論:なぜ戦争は起きたのか?プーチンの戦争
『プーチン ウクライナ侵攻 なぜ』― この問いに対する単純な答えは、残念ながら存在しません。 今回の侵攻は、
長年にわたる地政学的な要因(NATO拡大への恐怖と反発、勢力圏回復への野望)
プーチン氏自身の持つ独特な歴史観とイデオロギー(ロシア・ウクライナ一体論、ロシア例外主義、反西側感情)
ロシア国内の権力構造と情報環境(シロヴィキの影響力、エコーチェンバー)
プーチン氏個人の経歴と心理(KGB、屈辱感、歴史的使命感、誤算)
といった複数の要因が、数十年〜にわたって複雑に絡み合い、相互に影響し合った結果として引き起こされた、と考えるのが最も妥当でしょう。彼が「操り人形」である可能性は低いですが、彼自身の信念や目標、そして彼を取り巻く情報環境が、最終的にこの破滅的な決断へと彼を導いたのです。
この戦争は、ウクライナの人々に甚大な苦しみをもたらし、世界の秩序を揺るがし続けています。その根本的な原因を理解しようと努めることは、今後の国際社会のあり方や、権威主義的な指導者の行動を予測し、そして何よりも、このような悲劇を二度と繰り返さないために、私たち一人ひとりに課せられた重い課題と言えるでしょう。
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