【音で攻撃】音響兵器とは?種類・仕組み・威力から日本の現状まで徹底解説!
- UNREASH
- 4月4日
- 読了時間: 9分
「音」が武器になる…?まるでSF映画のような話ですが、実は現代には、**音波のエネルギーを使って人に様々な影響を与える『音響兵器』**と呼ばれる技術が存在し、開発が進められています。「音で攻撃って、一体どういう仕組みなの?」「どんな種類の音響兵器があるの?」「本当に使われているの?日本にもあるの?」
そんな疑問を持つあなたへ。この記事では、謎に包まれた『音響兵器とは』何か、その基本的な仕組みから、驚くべき種類と威力、世界での使用疑惑(上記ニュース:セルビアの首都で起きた反政府デモなど)、そして気になる日本の現状まで、誰にでも分かるように徹底解説します! 知られざる「音の兵器」の世界を覗いてみましょう。
目次

まず知りたい!『音響兵器とは』どんな仕組み?
音響兵器とは、その名の通り、「音」のエネルギー(音波)を利用して、標的となる人間に生理的・心理的な影響を与えることを目的とした兵器や装置のことです。
音は、空気などを振動させて伝わる「波」ですよね。音響兵器は、この音波の**「高さ(周波数:ヘルツ/Hz)」や「大きさ(振幅・音圧レベル:デシベル/dB)」、そして「音を向ける方向(指向性)」**を特殊な技術でコントロールし、人間にとって不快な、あるいは有害な効果を生み出そうとします。イメージとしては、巨大なスピーカーから特定の「嫌な音」を大音量で、狙った場所だけに集中して浴びせる、といった感じです。ただし、使われる「音」は、私たちが普段聞いている音だけではありません。

聞こえる音から聞こえない音まで…音響兵器の種類と威力
音響兵器は、使われる音の「高さ(周波数)」によって、大きく3つのタイプに分けられます。
タイプ①:聞こえる音で攻撃!【可聴域兵器】 (20Hz~20kHz)
これは、私たち人間の耳に聞こえる範囲の音を利用するタイプです。
LRAD(エルラド / 長距離音響発生装置): 最も有名で、実用化されている代表例です。非常に大きな音(モデルによっては160dB以上!ジェット機のエンジン音並みかそれ以上)を、レーザー光線のように特定の狭い範囲に集中して遠くまで届けることができます。主な用途は、遠くの相手への警告メッセージ伝達や、港湾警備、そして**群衆制御(デモ隊の排除など)**です。近距離でこの大音量を浴びると、強い痛みを感じたり、方向感覚を失ったりする可能性があります。※先述したセルビアでのデモ鎮圧も、LRADの使用が疑われています。
モスキート音発生装置: こちらは特殊で、主に10代~20代前半の若者にしか聞こえない、非常に高い周波数の不快な音(キーンという音)を発生させます。コンビニの前などでの若者のたむろ防止目的で設置されることがありますが、これも広義の音響装置と言えるでしょう。
タイプ②:人には聞こえない音で…?【超音波兵器】 (20kHz以上)
これは、人間の耳には聞こえない、非常に高い周波数の音(超音波)を利用するタイプです。コウモリやイルカが使う音ですね。兵器としての研究もされていますが、その効果や実用性はまだ未知数な部分が多いです。近距離で浴びると、不快感や吐き気、めまいなどを引き起こす可能性が指摘されています。
タイプ③:謎多き不快音【低周波兵器】 (20Hz未満)
こちらも人間の耳には聞こえない、非常に低い周波数の音(低周波音・インフラサウンド)を利用するタイプ。大型の風力発電所や工場の機械などから発生することもあります。低周波兵器は、まだ研究開発段階にあるとされていますが、もし実現すれば、吐き気や方向感覚の喪失、めまいなどを引き起こすだけでなく、非常に強いエネルギーを浴びた場合、内臓に共鳴して損傷を与えるといった恐ろしい可能性も理論的には考えられています。まさに「サイレントキラー」のような兵器と言えるかもしれません。
「非致死性」は安全?知っておきたい危険性
音響兵器は、銃や爆弾のように直接的に命を奪うことを目的としないため、「非致死性兵器(ノンリーサルウェポン)」や「低致死性兵器」と呼ばれることがあります。確かに、使い方によっては相手を傷つけずに無力化できる可能性を秘めています。
しかし、「非致死性=安全」と考えるのは大きな間違いです。LRADのような大音響を長時間浴び続ければ、一時的または永続的な聴覚障害を引き起こす危険性があります。また、研究によれば、極端に高い音圧レベル(185dB~200dB程度)では、心臓や肺に損傷を与えたり、空気塞栓症(血管に空気が入る)を引き起こしたりして、死に至る可能性もゼロではないとされています。
さらに、低周波兵器のように目に見えず聞こえない攻撃は、精神的な恐怖感も大きく、その長期的な健康への影響は未知数です。「非致死性」という言葉の裏に隠された危険性も、私たちは知っておく必要があります。しかも厄介なのは、いつどこで利用されるのか、非常に分かりにくく、今回のセルビアの例でもある通り、政府や軍が使用を否定させしてしまえば、証拠が出ずらいといった側面も持ち合わせています。加えると、音響兵器のターゲットになってしまうと、逃げ場がないあるいは防御不能に陥る可能性もあるのです。
銃や爆弾とどう違う?音響兵器ならではの特徴
従来の兵器(運動エネルギー兵器)と比べて、音響兵器にはいくつかの特徴があります。
原理の違い
銃弾や爆発のような物理的な力ではなく、「音波」というエネルギーで影響を与えます。基本的には、壁を壊したり、体を貫通させたりするものではありません。
射程と効果範囲
LRADは警告メッセージなら数km先まで届く一方、痛みを与える効果範囲はもっと短距離(数十m程度)です。モスキート音のように、ごく狭い範囲だけに効果を限定できるものもあります。
反動がない
音波を発射するだけなので、銃のような反動はほとんどありません。
環境の影響を受けやすい
音は、風向きや温度、湿度、障害物などによって伝わり方が大きく変わります。狙った通りの効果を発揮するには、周囲の環境を考慮する必要があります。
【比較表:音響兵器 vs 通常兵器】
特徴 | 音響兵器 | 通常兵器(銃・爆弾など) |
作用原理 | 音波エネルギー | 運動エネルギー、化学反応など |
主な効果 | 警告、不快感、痛み、方向感覚喪失、無力化(非致死が主) | 物理的破壊、殺傷(致死的なものが多い) |
射程 | 通信は長距離、効果は短~中距離 | 種類によるが、直接的な破壊効果は比較的短距離が多い |
致死性 | 低い(ただし危険性あり) | 高いものが多い |
反動 | ほぼ無し | 大きい |
環境影響 | 受けやすい | 比較的受けにくい |
本当に使われている?世界の事例と日本の現状
「そんな兵器、本当に使われているの?」と疑問に思いますよね。実は、世界では既に使用例や、使用が強く疑われるケースが報告されています。
セルビアでの使用疑惑(2025年3月)
記憶に新しいのが、セルビアの首都ベオグラードでの反政府デモ。犠牲者追悼の黙祷中に、広場にいた群衆が**原因不明の轟音や「唸るような音」**を聞き、パニック状態に陥って逃げ惑うという事態が発生しました。中には頭痛や吐き気、平衡感覚の異常を訴える人もいました。セルビア当局は当初否定しましたが、米国から購入したLRADの保有は認めています(ただし、デモでの攻撃使用は否定)。専門家の中には、LRADではなく、実験的な「ボルテックスリングガン」ではないか、という指摘もあります。現在、欧州人権裁判所が調査に乗り出すなど、国際的な問題となっています。この事件は、音響兵器が現実の脅威となり得ることを生々しく示しました。
その他の国での使用例(LRADなど)
LRADは、アメリカの警察がデモ隊の規制(ウォール街占拠など)に使用した事例や、各国の海上保安機関が海賊対策や不審船への警告に使用した事例などが報告されています。
日本ではどうなのでしょうか?
現在のところ、日本の自衛隊や警察が、攻撃的な意図を持つ「音響兵器」を公式に導入・配備しているという情報はありません。日本の憲法(第9条)や防衛政策は、専守防衛を基本としており、攻撃的な兵器の保有には制約があります。しかし、可能性がゼロとは言い切れません。
警告・通信用としての保有?
LRADのような指向性の高い音響装置(AHD: Acoustic Hailing Device)は、武器としてではなく、遠距離への警告伝達や通信手段として、海上保安庁などが保有・使用している可能性はあります(実際に、北朝鮮漁船への警告に使用されたとの報道例あり)。
群衆整理・警備での利用?
大規模デモやテロ対策、重要イベント(オリンピックなど)の警備において、警察が非致死性オプションの一つとして、限定的な音響装置を導入する可能性は考えられます。
将来的な導入・研究開発?
周辺国の軍事的脅威の高まりや、非致死性兵器への関心の高まりを受け、将来的に防衛目的で音響技術の研究開発が進められたり、同盟国(アメリカなど)との共同開発プログラムの中で導入されたりする可能性も否定できません。
現状、日本の「沈黙の兵器庫」に音響兵器が隠されているという確証はありませんが、その技術動向や国際情勢の変化によっては、将来的に議論の対象となる可能性は十分にあります。
【参考:国別のLRADの使用例(報道ベース)】
国 | 機関 | 時期 | 状況 | 報告された結果 |
米国 | 法執行機関 | 2011年など | ウォール街占拠デモなど | 聴覚障害の訴訟など |
日本 | 海上保安庁 | 2017年 | 北朝鮮漁船への警告 | 不明 |
ギリシャ | 国境警備隊 | 2020-21年 | トルコ国境での移民阻止 | 不明 |
セルビア | 警察(疑惑) | 2025年3月 | 反政府デモ | パニック、健康被害の報告 |
SFが現実に?音響兵器のこれからと考えるべきこと
『音響兵器とは』何か、その仕組みから種類、現実世界での使用疑惑、そして日本の状況まで見てきました。かつてはSFの世界の産物と思われていた「音の兵器」は、着実に現実のものとなりつつあります。
LRADのように、特定の状況下で有効な「非致死性」オプションとして期待される側面がある一方で、その威力は決して無視できず、使い方、あるいは現在のテクノロジー技術に進歩よっては、深刻な健康被害をもたらす危険性も確定的なほど孕んでいます。特に、まだ研究段階にある低周波兵器などは、その効果や影響が未知数であり、倫理的な懸念も大きいと言わざるを得ません。セルビアでの事件疑惑は、こうした兵器が秘密裏に使用され、市民に向けられる可能性すら示唆しています。技術は常に進化しますが、その利用方法をコントロールし悪用を防ぐための国際的なルール作りや議論は、まだ追いついていないのが現状です。
日本においては、今のところ積極的な導入の動きは見られませんが、安全保障環境の変化によっては、将来的に選択肢として浮上する可能性も否定できません。「音」という、目に見えずどこにでもあるものが、兵器となった現代。私たちは、この新しい技術の可能性と危険性の両方を冷静に見つめ、それがもたらす未来について、真剣に考えていく必要があるのではないでしょうか。
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