マインドフルネス瞑想の起源と普及、初心者のやり方まで
- UNREASH
- 2024年7月20日
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更新日:2月16日
マインドフルネス瞑想はストレスの軽減や心の平穏、そしてクリエイティブなアイディアやイノベーションを得るための強力なツールとして、古代人類から現代の成功者やアスリートに至るまで、多くの人々に実践されています。そんな神秘的とも言える瞑想法の歴史的背景、普及の軌跡、そしてマインドフルネス瞑想を初心者でも簡単に始められる方法について詳しく解説します。

目次

マインドフルネス瞑想の起源
マインドフルネス瞑想のルーツは、今から約2500年前の古代インドにさかのぼります。仏教の創始者であるゴータマ・シッダールタ(釈迦)が瞑想を通じて悟りを開き、その教えの中で「サティ(sati)」と呼ばれる気づきの実践を強調しました。これが現在のマインドフルネスの概念と非常に似ています。
釈迦って何者?
釈迦(シャカ、Sakyamuni)は、仏教の創始者であり、本名はゴータマ・シッダールタ(Gautama Siddhartha)です。彼は紀元前5世紀頃にインドで生まれ、後に悟りを開き、仏陀(Buddha、「目覚めた者」)となりました。釈迦の生涯や教えについて簡単に説明します。
釈迦の生涯
誕生:釈迦はシャーキャ族の王子として現代のネパールのルンビニで生まれました。
青年期:贅沢な生活を送りましたが、外界の苦しみ(老病死)に触れ、出家を決意。
修行:厳しい苦行を行った後、中道(極端を避けた修行)の道を見出し、菩提樹の下で瞑想し、悟りを開きました。
教え:悟りを開いた後、彼は「四諦」(苦、集、滅、道)や「八正道」などの教えを説き、弟子たちに仏教の教えを広めました。
サティとは?
サティ(sati)は、パーリ語で「気づき」「注意」「覚醒」を意味し、仏教における重要な瞑想実践の一つです。サティは現在のマインドフルネス(mindfulness)の基盤となっており、瞬間瞬間の経験に対する非判断的な気づきを養うことを目的としています。
サティの実践
気づきの対象:呼吸、体の動き、感情、思考、外部の音など、現在の瞬間に存在するすべての経験。
方法:瞑想中、特定の対象に意識を集中し、その対象がどのように変化するかを観察します。例えば、呼吸に意識を向け、その感覚に気づき続けます。
サティの効果
心の平静:ストレスの軽減や心の安定をもたらします。
集中力の向上:注意力が高まり、日常生活の質が向上します。
感情の調整:感情の認識とコントロールが容易になります。
釈迦の教えにおけるサティは現代のマインドフルネス瞑想の基盤となっており、心の健康と精神的な成長を促進するための有効な方法とされています。

仏教の伝播とマインドフルネスの広がり
仏教は紀元前3世紀にアショーカ王の支援を受けてインド全土に広がり、その後シルクロードを通じてアジア全域に伝播(でんぱ=広まること)しました。この過程でマインドフルネス瞑想も各地に広がり、各地の文化や宗教と融合しながら発展していきました。例えば、チベット仏教や禅宗などがその一例です。
アショーカ王って誰?
アショーカ王(Asoka、紀元前304年 - 紀元前232年)は、インドのマウリヤ朝の第3代皇帝であり、インド史上最も偉大な王の一人として知られています。彼は紀元前268年頃から紀元前232年までインド亜大陸を統治し、その治世下で仏教を広めるために多大な貢献をしました。
アショーカ王の治世と業績
領土の拡大: アショーカ王は即位後、インド亜大陸の大部分を征服しマウリヤ朝の領土を最大限に広げました。 特にカリンガ戦争(紀元前261年)はアショーカ王の領土拡大の一環として行われ、多くの犠牲者を出しました。
カリンガ戦争後の改心: カリンガ戦争の凄惨な結果を目の当たりにしたアショーカ王は深い悲しみと罪悪感を抱きました。 これを契機に、彼は暴力と戦争を放棄し平和と慈悲を重んじる仏教に改心しました。
ダルマ(法)による統治: アショーカ王は「ダルマ」と呼ばれる倫理的な教えに基づく統治を推進し、非暴力、真実、公正、慈悲などの価値観を重視しました。 彼は全国にダルマを広めるための碑文を刻み、これらの教えを普及させました。
仏教支援の理由
平和と非暴力の追求: カリンガ戦争後、アショーカ王は仏教の非暴力と平和の教えに深く共鳴し、これを広めることで自身の統治を正当化しようとしました。 仏教の教えを採用することで、国内の平和と安定を図りました。
道徳的統治の促進: アショーカ王は仏教の道徳的教えが彼のダルマ統治と一致することを理解し、これを国家の指針としました。 仏教の価値観を通じて統治の倫理的基盤を強化しました。
社会的改革: アショーカ王は病院や道路の建設、動物の保護など、社会的改革を推進しました。これらは仏教の慈悲と共感の教えに基づいています。 彼はまた、仏教の教えを普及させるために修道院や仏塔を建設し、仏教僧の活動を支援しました。
このように、アショーカ王の支援によって仏教はインド全土に広まり、さらにはシルクロードを通じてアジア全域に伝播。アショーカ王の治世は、仏教の普及と発展において重要な役割を果たしました。

西洋(欧米)への導入
マインドフルネス瞑想が西洋(ヨーロッパやアメリカ)に紹介されたのは19世紀後半から20世紀初頭にかけて。1950年代から1960年代、東洋(アジア諸国)の哲学や瞑想法が西洋の心理学者や学者の間で注目を集め始めました。この時期に、仏教の教えや瞑想法が欧米の精神療法やストレス管理の手法として導入され始めます。
東洋の哲学や瞑想法が西洋で注目を集めたのは、戦後の精神的充足感への渇望と、伝統的な西洋医学や心理療法の限界を補う新しい方法を求める動きが背景にあります。簡単に言えば、戦後に精神的な満足感を求める人々が増え、従来の西洋の方法が限界に達していたからです。東洋(アジア諸国)の哲学は内的な平和や現在の瞬間に集中することを重視し、西洋(欧米)の問題解決重視のアプローチとは異なります。この違いが、新しいストレス対策として西洋での人気を高めました。

現代のマインドフルネス瞑想
現代においてマインドフルネス瞑想はジョン・カバット・ジンによって1980年代に大きく普及しました。彼はマサチューセッツ大学医療センターで「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」を開発し、これが医療や心理療法の現場で広く採用されるようになったのです。
MBSRとは?
MBSR(Mindfulness-Based Stress Reduction)は、日本語で「マインドフルネスストレス低減法」と呼ばれ、1979年にジョン・カバット・ジン(Jon Kabat-Zinn)博士によって開発されました。MBSRは、仏教のマインドフルネス瞑想の技法を基にしながら、宗教色を排除し、科学的にストレス軽減や健康増進を目的としたプログラムです。
MBSRの背景と目的
開発の背景: ジョン・カバット・ジンはマサチューセッツ大学医療センターで、慢性的な痛みやストレスに苦しむ患者のためにMBSRを開発しました。 彼は東洋の瞑想技法と西洋の心理学・医学を統合し、実践的かつ科学的なアプローチを追求しました。
目的: ストレスの軽減や 痛み、不安の管理、 心身の健康の向上と 全体的な生活の質の向上を目指しました。
MBSRのプログラム構成
MBSRプログラムは通常、8週間にわたるセッションで構成されており、以下のような要素が含まれます。
週1回のグループセッション: 各セッションは約2.5時間で、マインドフルネス瞑想やヨガの実践、グループディスカッションが行われます。 参加者は瞑想やヨガの技法を学び、日常生活に取り入れる方法を学びます。
1日リトリート: 8週間のプログラムの中盤に1日(6~8時間)のリトリートが組み込まれ、集中した瞑想やヨガの実践が行われます。
ホームプラクティス: 参加者は毎日45分から1時間のホームプラクティスを行い、マインドフルネス瞑想やヨガの練習を続けます。 指導者から提供されるオーディオガイドやワークブックを使用して、自宅での練習をサポートします。
MBSRの主要な実践
ボディスキャン瞑想: 体の各部位に順番に注意を向けていく瞑想法で、身体の感覚や緊張を観察します。
マインドフルネス瞑想: 呼吸や身体感覚に注意を向け、現在の瞬間に意識を集中させる瞑想法です。
マインドフルヨガ: マインドフルネスの意識を持ちながら行うヨガのポーズで、身体の柔軟性や強さを高めます。
MBSRの効果と科学的証拠
ストレスの軽減: MBSRはストレスホルモン(コルチゾール)のレベルを低下させ、心身のストレス反応を和らげることが示されています。
精神的健康の改善: 不安、抑うつ、睡眠障害などの改善が報告されており、全体的な精神的健康が向上します。
身体的健康の改善: 慢性的な痛みの軽減、免疫機能の向上、血圧の低下など、身体的な健康にも寄与します。
注意力と集中力の向上: マインドフルネス瞑想は注意力や集中力を高め、日常生活や仕事におけるパフォーマンスを向上させます。

科学的研究と普及
21世紀に入り、マインドフルネス瞑想の効果に関する科学的研究が急増。多くの研究がマインドフルネス瞑想がストレス軽減、注意力の向上、感情調整の改善に効果的であることを示しています。これにより教育機関、企業、医療施設などでマインドフルネスプログラムが導入されるようになり、広く普及することになりました。
21世紀におけるマインドフルネス瞑想の最も有名な研究の一つとして、ハーバード大学のサラ・ラザール博士(Sara Lazar)による研究があります。
研究内容
ラザール博士の研究は、マインドフルネス瞑想が脳の構造に与える影響を調査しました。彼女の研究チームはMRIを用いて、瞑想者と非瞑想者の脳を比較しました。
主な発見
8週間のマインドフルネス瞑想プログラムに参加した被験者の脳を調べた結果、瞑想が脳の灰白質(かいはくしつ)の密度を増加させることを発見しました。特に、記憶や学習に関わる海馬(ヒポカンプス)や、自己認識、共感、ストレス調整に関わる領域で顕著な変化が見られました。 また、ストレスに関連する扁桃体(アミグダラ)の縮小も報告されており、これがストレス軽減の一因であると考えられています。
その影響
この研究はマインドフルネス瞑想が脳の構造を変えることで、精神的および感情的な健康に寄与することを科学的に裏付ける重要な証拠となりました。ラザール博士の研究結果は教育機関、企業、医療施設などでマインドフルネスプログラムが導入されるきっかけとなり、マインドフルネス瞑想の普及に大きく貢献しました。

初心者のためのマインドフルネス瞑想のやり方
では、マインドフルネス瞑想を実際に始めてみましょう。以下のステップに従えば、今日からでも実践可能なので、ぜひあなたも習慣として取り入れてみて下さい。
ステップ1:静かな場所を見つける
まず、雑音が少なくリラックスできる静かな場所を見つけましょう。自宅の一角や公園のベンチなど、自分が落ち着ける場所を選びます。
ステップ2:姿勢を整える
大地や椅子又は床に座るかして、楽な姿勢をとります。背筋を伸ばし、手は膝の上に置きます。目を閉じゆっくりと呼吸に意識を集中させます。
ステップ3:呼吸に集中する
自然な呼吸に意識を向けます。息を吸うときと吐くときの感覚に注意を払い、呼吸のリズムに集中します。このとき、深く呼吸をする必要はなく、普段の自然な呼吸を続けます。
ステップ4:気づきを持つ
呼吸に集中している間に雑念や感情が浮かんでくることがあります。それに気づいたら、無理に排除しようとせず、ただ「今、自分は考え事をしている」と認識して、再び呼吸に意識を戻します。
ステップ5:継続する
初めは5分程度から始め、徐々に10分、20分と時間を延ばしていきます。毎日同じ時間に行うことで瞑想を習慣化しやすくなります。

現代のストレスとマインドフルネス
現代社会は情報過多、競争、仕事のプレッシャーなど、様々なストレス要因がありますが、古代の人々もまた異なる形でストレスを経験していました。
日常の生存:食糧確保、病気、天災など、基本的な生存に関わるストレス。
社会的なプレッシャー:家族やコミュニティの期待、戦争、奴隷制など、社会的なプレッシャーや不安。
精神的な悩み:老病死、無常(全ての物事が変化すること)への気づきからくる精神的な悩み。
マインドフルネス瞑想は古代から現代に至るまで、その有効性を証明し続けており、現代人にとっても非常に有益な実践法です。現代においても、マインドフルネス瞑想を取り入れることでストレスの軽減、心の平穏、注意力の向上、感情の調整など、多くの効果を得ることができます。
マインドフルネス瞑想は古代の仏教の教えに起源を持ちながら、現代においてもその価値を持ち続けています。歴史を通じて様々な文化と融合しながら進化してきたこの瞑想法は、今日でも多くの人々の生活の質を向上させるための重要なツールとなっています。初心者でも簡単に始められるマインドフルネス瞑想を取り入れることで、心の平穏を取り戻しストレスを軽減、より充実した日常生活を目指しましょう!
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