メガソーラー問題!森林伐採と利益配分のジレンマ
- Ruck D Ruther

- 2025年12月5日
- 読了時間: 8分

プロローグ
再生可能エネルギーのひとつである大規模太陽光発電(メガソーラー)は、脱炭素社会に向けた救世主のようにもてはやされてきた。しかし、近年は山林を切り開く開発が各地で問題化している。例えば北海道白老町では、生活圏に近い山林で6件ものメガソーラー計画が浮上し、住民が「土砂崩れが心配」「これまで動物たちと共存してきた」「何も壊さないでくれ」と反対団体を結成する事態になっている。
説明会を報道陣抜きで非公開開催しようとした企業側に住民が反発し、11月30日の説明会は中止に。このように、一見エコに見えるメガソーラーが、森林伐採や生態系破壊につながる矛盾に市民の不安が高まっている。また海外資本による参入も懸念である。本稿では、日本各地で進むメガソーラー開発の現状と課題を、客観的なデータと地元の声をもとに整理し、環境・社会への影響を考える。
目次
メガソーラーとは
メガソーラーとは、広大な土地に設置される大規模な太陽光発電所のこと。2012年の固定価格買取制度(FIT)導入以降、国内の太陽光発電容量は急増し、日本は*国土あたり(密度)*の太陽光導入量が世界一となっている。限られた平地では設置場所が不足し、近年は山林や休耕地への展開が増加しているというわけだ。一方で、事業者は「国が一定価格で買い取る」と約束されたFIT制度の下で収益を得やすく、一部企業や投資家にとって安定した収入源となる。しかしその経済的メリットの一方で、森林や農地を転用する場合には環境や地域社会への負担が課題となる。
森林伐採と生態系への影響
千葉県鴨川市で計画中のメガソーラー造成現場。
写真のように山肌が大規模に伐採され、切り開かれている。これは敷地146ha、約36万5000本の木が伐採された事例で、群をなす重機が山林を切り崩した。北海道鴨川市の住民組織は「重機で伐採された木が谷底に積み重なり、豪雨時に土砂災害を招く危険性がある」と指摘し、切り倒した木を放置する危険性を専門家も警告する。

また森林を失うことは、動物たちの生息地や移動経路を奪うことにも直結する。拡大するメガソーラー開発に伴い、クマ・シカ・イノシシなど多様な野生動物の生息環境が分断され、エサ場が減少することは明白。昨今頻繁にニュースになる『熊出没』も、実質的にメガソーラー事業の影響で、"十中八九人間のせい"である。 専門家は、メスのツキノワグマの行動圏は50平方キロメートル、オスで100~200平方キロメートルにも及ぶとされ、個別のメガソーラー(0.6平方キロメートル程度)だけで生息域全体を左右するものではないという意見がある一方、実際には自然環境の変化が動物たちを人里に追いやり、クマ出没件数の増加要因に挙げる声も当然ある。
北海道釧路湿原近郊でメガソーラー開発のため造成予定(および造成)された湿地の様子。


希少な湿地帯が重機で切り開かれ、大地がむき出しになっている。釧路湿原は丹頂鶴の繁殖地を擁する国際的にも重要な生態系だが、立地規制の抜け穴を突いて開発が相次ぐ。こうした湿原や森林の剥ぎ取りは、水質汚濁や生物多様性の損失、土砂災害リスクの増大にも繋がる。
CO₂削減効果と森林の役割の比較
太陽光発電は発電時にCO₂を排出しないため、導入による温暖化防止効果は大きいとされる。とある研究によれば、メガソーラー1MW(およそ1ヘクタール程度)から得られる年間CO₂削減量は約662トンと推定。仮にこの規模を30ヘクタールに拡大すれば、何百倍ものCO₂削減量が期待される計算だ。
一方で、森林はCO₂の固定源でもあり、年数年生のスギ人工林1ヘクタールあたりのCO₂吸収量は年約8.8トンと推定される。例えば、30ヘクタールの森林が年間約1300トンのCO₂を吸収していたとすれば(※実際には樹種や樹齢による変動あり)、これを伐採すればその分のCO₂吸収源を失う。
つまり、CO₂収支だけで見ると、メガソーラーの発電による削減量は森林の吸収量を大きく上回る場合が多いと報告されている(この報告の真偽には疑義が残るが)。メガソーラー設備の建設時に排出されるCO₂は、運転開始後約6年で回収できるという試算。その一方で森林には、CO₂吸収のほかに酸素放出、水源涵養や土砂抑止、景観保全など多様な役割があり、これを一度失うと簡単には代替できない(ほぼ不可能)。したがって、森林とメガソーラーは正味のCO₂抑制効果と生態系・地域環境への貢献という異なる面でのトレードオフにあると言える。
費用負担と利益配分の問題
メガソーラー事業の収益は固定価格買取制度によって保証される一方、その費用は消費者が負担する再エネ賦課金として電気料金に上乗せされる。経済産業省の発表によれば、2025年度の再エネ賦課金単価は1kWhあたり3.98円となり、一般的な月400kWh消費の家庭では年間約1万9104円の負担増に相当。つまり家庭でいくら節電しても、この賦課金分は避けられず、電気代は大きく下がらない。
実際、2012年度の0.22円/kWhから約18倍にまで上昇していることが示されています。この仕組みで利益を得ているのは、安定した固定価格で電力を売却できる事業者や投資家、大手企業、金融機関だけである。反面、国民(家計)は賦課金という形で負担を負い、自治体は造成や撤去に伴う管理コストを負う構図になっている。こうした構造から「一般家庭の電気代はむしろ上がるのに、得をするのは一部の投資家や企業だけ」との批判は根強く、市民の間では「再エネ賦課金は第二の税金」との声も上がるほどだ。

地元住民の声と社会的議論
メガソーラー開発は地域社会にも直接的な影響を及ぼす。先述した北海道白老町では、住民説明会の透明性を巡り紛糾し、住民が報道の同席を求めるなど行政への不信が高まったnewsdig.tbs.co.jp。千葉県鴨川市では造成現場周辺に「ストップ!!メガソーラー」の看板が立ち並び、環境悪化や水害への懸念から住民らが署名活動を展開するnews.tv-asahi.co.jp。北海道釧路市でも市民団体や文化人が連携し、「メガソーラー建設反対」の全国会議が開かれるなど、各地で反対運動は広がる。釧路市は「メガソーラーはもういらない」との宣言を市挙げて表明し、市民や専門家を巻き込んで論争が続いている。
こうした動きは、環境保護と地域振興のバランスをどう取るかという議論へと発展、政府も2025年12月には地域協調型の再エネ法整備に向け環境大臣と北海道知事が会談し、自治体や住民が納得できる仕組みづくりの検討を進める。いずれにせよ、地元住民の理解・納得なくして新規開発は進められないという機運が高まっており、事業者の説明責任や再生可能エネルギーの地域還元が改めて求められる。
結論・展望
メガソーラーは太陽光というクリーンエネルギーの利点を活かしつつも、森林伐採や土地改変による環境負荷が無視できない「光と影」の両面を抱える。森林は「森なくして人なし」と言われるように、我々の生活や経済に多大な恩恵をもたらしてきた。今後はメガソーラーの建設地を慎重に選び、使用済みパネルの適正処理や撤去費用の積立てなど、負の影響を最小化するルール整備が必須。また、余剰電力買取制度(FIT)から市場連動型(FIP)への移行や、太陽光発電を既存建物の屋根上・空き地に活用する政策も加速すべきである。地域社会においては、発電所整備のメリット(雇用創出や税収など)を住民と共有するモデルの事例もある。こうした対策により、再生可能エネルギーの普及と自然環境保全の両立を図り、持続可能なエネルギー社会を目指すことが求められる。
エピローグ
メガソーラーは、再生可能エネルギーを拡大しながら気候変動に立ち向かう一手段だ。しかし、「森を切り拓いて得られる便益」と「失われる自然の価値」とを冷静に天秤にかけ、「得をするのは一部の特権者だけ」という視点と事実への認識が重要。大切なのは、利益や電力を一部に独占させず、地域住民や未来世代にも公平に恩恵をもたらす仕組みをつくることではないだろうか。クリーンエネルギーへの転換を進めながら、同時に「森林の価値」を再評価し、緑豊かな自然と共存する道筋を描いていかなければ、人類に未来はない。
固定価格買取制度(FIT)とは
再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が義務付ける制度です。この制度は、再生可能エネルギーの普及を促進するため、発電設備の建設コストを回収しやすくすることを目的としています。買い取りにかかる費用の一部は、「再エネ賦課金」として国民の電気料金から集められています。
制度の仕組み
国が価格と期間を約束:国が再生可能エネルギーの買い取り価格と期間(例:太陽光は10年)を定めます。
電力会社が買い取り:対象となる再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)で発電した電気を、電力会社が買い取ります。
国民が費用を負担:電力会社が買い取る費用は、電気を利用するすべての人から「再エネ賦課金」として電気料金に上乗せされて徴収されます。
普及を促進:FIT制度により、初期投資の回収見通しが立ちやすくなり、再生可能エネルギーの導入が促進されます。
主な特徴
対象:太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス発電など。
目的:地球温暖化対策やエネルギー自給率の向上、再生可能エネルギーの普及拡大。
買取価格の決定:経済産業大臣が、関係省庁の意見を参考に毎年決定します。
買取期間:電源や規模によって異なります。例えば、住宅用太陽光(10kW未満)は10年間、風力・水力などは20年間です。
注意点
制度の変遷:2012年に導入され、2019年頃から買取期間の満了を迎える設備が出てきています。
FIP制度:FIT制度からさらに進化した「FIP制度(フィードインプレミアム)」が導入されています。これは、発電事業者が市場で電力を売却し、市場価格に上乗せしてプレミアム(補助金)を受け取る制度です




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