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次世代ブログ

RIZIN男祭り:東京ドームの熱狂と見過ごされた「質」への警鐘

  • 執筆者の写真: Renta
    Renta
  • 5月4日
  • 読了時間: 14分

2025年5月4日、日本の総合格闘技界が注目するビッグイベント「RIZIN男祭り」が、聖地・東京ドームで開催された 。メインイベントのフェザー級タイトルマッチ、そして朝倉未来の復帰戦をセミファイナルに据え、ヘビー級トーナメントの開幕など、話題性には事欠かない豪華なカードが並んだ 。しかし、その華々しい舞台裏で、イベント全体の質、特に一部ファイターのファイトスタイルに対する疑問の声が上がっているのも事実である。本稿では、選手個々への敬意を払いながらも、特に朝倉未来と鈴木千裕の試合、そして朝倉が率いるとされるJAPAN TOP TEAM(JTT)勢の戦いぶりに焦点を当て、イベントが抱える課題と、一部のファン(私含め)が渇望する「真の激闘」との乖離について、辛口ながらも深く掘り下げていく。


RIZIN男祭り
※画像は "RIZIN男祭り" とは無関係です。

目次


  1. RIZIN男祭り–巨大な舞台で希薄化する興奮? 東京ドーム興行への批判的視点

期待と現実のギャップ:「男祭り」が届けたもの

東京ドームという、日本のスポーツ・エンターテイメントにおける最高峰の舞台。そこで「男祭り」と銘打たれたイベントが開催されるとなれば、ファンが期待するのは、その名にふさわしい、魂を揺さぶるような激しい戦いであろう。特に、朝倉未来の復帰というストーリーも相まって、大会への注目度は非常に高かった。


しかし、蓋を開けてみれば、一部のファン、特に打撃戦を好む層にとっては、期待外れの内容だったと感じられた側面は否めない。後述する朝倉未来やその弟子たちの試合内容に見られるように、グラウンドコントロールを主体とした戦術が目立ち、「男祭り」という勇ましいネーミングから想起されるような、血湧き肉躍る打撃戦が展開されたとは言い難い場面も多かった。加え、拍子抜けするほどの秒殺KOも...。


これは、RIZINが目指すエンターテイメントの方向性と、一部のファンが求める興奮との間に、埋めがたい溝の存在を示している。壮大なスケールと煽情的なネーミングで期待感を高めながらも、提供される試合内容が必ずしもそれに合致しないのであれば、それはファン離れを招く危険性を孕んでいると言わざるを得ない。


国際競争力の影:国内トップは世界で通用するのか?

RIZINの「質」に対する疑問は、単なる主観的な好みの問題だけではない。過去の国際戦績が、その背景にある。記憶に新しいのは、大晦日に行われた「RIZIN対Bellator MMA」の全面対抗戦での0勝5敗という完敗である。さらに、ONE ChampionshipのチャトリCEOがRIZINとのレベルの違いに言及したり 、一般的な格闘技団体の比較においても、UFCやBellator、時にはONE Championshipの後塵を拝すると評価されることが多い 。   


堀口恭司のようなトップファイターでさえ、日米の練習環境や指導体制、総合格闘技が職業として確立されているかの違いを指摘している。これは、個々の選手の能力だけでなく、日本MMA界全体の構造的な課題を示している。このような背景を踏まえれば、「RIZINの質が落ちている」という感覚や、「JAPAN TOP TEAM(JTT)が日本のトップを担うには弱い」という批判は、単なる一部のファンの不満ではなく、国際的な物差しで見た場合の日本の立ち位置に対する、ある種の客観的な評価とも重なってくる。RIZINが真に世界レベルの団体を目指すのであれば、この国際競争力の差という現実に、より真摯に向き合う必要があるだろう。   



  1. 朝倉未来のグラウンド勝利は戦術的勝利かエンターテイメントの敗北か

復帰戦の重圧と「手負い」の相手

朝倉未来にとって、この「RIZIN男祭り」は、平本蓮、ウガール・ケラモフに連敗した後 、約9ヶ月ぶりの復帰戦であり、まさに正念場であった 。当初予定されていた平本蓮との再戦は平本の怪我で流れ 、代役として白羽の矢が立ったのが、前フェザー級王者であり、直近の試合(RIZIN.50でのカルシャガ・ダウトベック戦)から間もない鈴木千裕だった。


この対戦決定の経緯自体にも、批判的な声はあった。特に平本蓮は、朝倉が過去に「手負いの選手とはやらない」といった趣旨の発言をしていたにも関わらず、連戦でダメージの残る鈴木を選んだことに対し、「正直がっかりした」とコメントしている。対する朝倉は、鈴木の分析を徹底的に行い 、鈴木もまた「真っ直ぐ突き進む」スタイルで朝倉に挑む構図となった。


試合展開:徹底されたグラウンドコントロール

試合は、朝倉の戦術が見事にハマる展開となった。

  • 1ラウンド

    開始直後、鈴木がプレッシャーをかけるが、朝倉は冷静に対応。鈴木の組み付きを切り、逆にダブルレッグでテイクダウンを奪う。コーナー際でトップポジションをキープし、パウンドを打ち込む。鈴木はガードから抵抗するも、出血も見られ、朝倉優位のままラウンドを終える。

  • 2ラウンド

    序盤は打撃の応酬も見られたが、朝倉は再びタックルからシングルレッグ、さらに小内刈りを合わせてテイクダウンに成功。コーナーに押し込み、トップから腹部へのパンチや肘をコツコツと当て続け、鈴木の体力を削っていく。鈴木は下のポジションから打開策を見出せず、苦しい時間が続く。

  • 3ラウンド

    最終ラウンド、後がない鈴木が前に出るが、朝倉はミドルや膝で応戦し、組み付いてニンジャチョークを狙う場面も。朝倉の細かいパウンドにより鈴木の左目上のカットが悪化し、流血がひどくなる。


この展開は、まさに一部のファンが「寝っ転がってごちゃごちゃしても、盛り上がらないし、見ていて飽きる」と評するグラウンド主体の攻防そのものであった。


結末:ドクターストップという名の「塩試合」?

勝負を決したのは、強烈な打撃によるKOではなく、鈴木の左目上のカットによるドクターストップ(TKO)であった。朝倉にとっては、復帰戦を勝利で飾り、「グラウンドでの強さなど新たな『朝倉未来』像を示す」  という目的は達成したのかもしれない。しかし、朝倉未来に固執しない観客(真の格闘技好き)が期待したであろう「血が飛び交うような激しい殴り合い」とは程遠い結末であり、一部からは「塩試合」と揶揄されても仕方ない内容だった。   


この試合内容に対し、放送席にいた平本蓮は「鈴木千裕が立ちに行く動きを全然見せなかった。朝倉未来は全然強くなかった」と、極めて辛辣な評価を下している。これは、単なるライバルの発言として片付けることはできない。朝倉の勝利は戦術的には見事だったかもしれないが、エンターテイメント性という観点、特に打撃戦を期待するファンにとっては、物足りなさを感じさせるものだったという見方を裏付けている。グラウンドコントロールという「武器」が、果たしてファンが、コアな格闘技好きか望む朝倉未来像と合致しているのか、今後の彼のファイトスタイルが注目される。


※事実、クレベルを秒殺KOした新チャンピオン "シェイドゥラエフ" も、朝倉と鈴木の試合について聞かれ、「つまんない試合でした」と試合後インタビューで語っている。



  1. JTTは試練の時 – 日本最高峰か「突進トップチーム」TTTか

JTTの評価:「ジャパントップチーム」への疑問符

朝倉未来、朝倉海兄弟が所属するジムとして知られるJAPAN TOP TEAM(JTT)。今回の「RIZIN男祭り」には、朝倉未来に加え、西谷大成、ヒロヤ、秋元強真といったJTT所属、あるいは関連の深い選手たちが名を連ねた。彼らはJTTという看板を背負い、日本のトップを目指す存在として期待されている。

しかし、一部のファンからは、JTTが真に「日本のトップチーム」と呼べる実力を持っているのか、疑問の声が上がっている。特に個人的には、そのファイトスタイルが打撃に乏しく、安易なタックルや組み付きに頼る傾向があるとして、「TTT(突進トップチーム)」と揶揄したいほどだ。


今回のイベントでのJTT勢のパフォーマンスは、この批判が的を射ているのかを検証する格好の材料となった。


退屈なRIZIN男祭り
※画像は "RIZIN男祭り" とは無関係です。

ケーススタディ1:西谷大成 – 打撃の脆さを露呈した敗北

朝倉未来の弟子であり、「朝倉未来1年チャレンジ」出身の西谷大成 。師匠と同じ大会に出場することに強い思い入れを持って臨んだ一戦だった。対するは萩原京平。萩原はグラウンドに弱点があると見られていた。


試合は、まさにJTTへの批判を裏付けるような展開となった。西谷は序盤から得意の組み技に持ち込もうと強引なタックルを仕掛けるが、萩原はこれを的確にディフェンス。スタンドの攻防に戻ると、萩原の鋭い打撃が西谷を捉える。コンビネーションからの強打で西谷は大の字に倒れ、衝撃的なKO負けを喫した。

この結果は、「TTT」批判、すなわち「突進(タックル)はするが打撃はしょぼい」という指摘を、これ以上なく明確に示してしまった。得意とするはずの組みで勝負を決められず、打撃戦では完敗。JTT所属選手の脆さが露呈した敗戦と言える。


ケーススタディ2:ヒロヤ – グラウンド圧殺勝利と「MMAなめんなよ」発言の真意

西谷と同じく「朝倉未来1年チャレンジ」一期生であり、JTTで研鑽を積むヒロヤ 。対戦相手は、MMAデビュー戦となる篠塚辰樹。両者の間には試合前から舌戦が繰り広げられていた。


試合は、ヒロヤがMMAファイターとしての格の違いを見せつける形となった。開始早々に篠塚の打撃をかいくぐりテイクダウンに成功。グラウンドではサイドポジションから容赦ない肘打ち(鉄槌)の嵐を浴びせ、防戦一方となった篠塚陣営からタオルが投入され、TKO勝利を収めた。


この勝利は、ヒロヤのMMAスキル、特にグラウンドでの決定力を示すものであった。しかし、その勝利のプロセス – 即座のテイクダウンからのグラウンド&パウンド – は、まさに「TTT」と揶揄されるスタイルそのものでもある。打撃での攻防はほとんど見られなかった。試合後、ヒロヤはマイクで「MMAなめんなよ」と発言。これは、MMA初挑戦で敗れた篠塚へ、そして安易にMMAを語る人々へのメッセージと受け取れるが、同時に、グラウンドゲームの重要性を軽視する風潮へのアンチテーゼとも解釈できる 。打撃戦を望むファンにとっては、この勝利スタイルと発言は、率直に言って退屈な感情を抱かせるものだったかもしれない。



ケーススタディ3:秋元強真 – バランスを見せるも決定打欠く判定勝利

JTT期待の若手、19歳の秋元強真。バンタム級からフェザー級に階級を上げての初戦で、ストライカーの高木凌と対戦した。


試合は、秋元が3-0の判定で勝利。打撃、寝技ともに高木を上回り、「一段上のレベルを感じさせた」と評される内容だった。スクランブルの攻防も見られ、会場を沸かせた。   


秋元の勝利は、JTTに才能ある若手が存在することを示した。しかし、判定勝利という結果は、「JTTは弱い」という批判を完全に払拭するには至らない。また、「打撃でも寝技でも」高いレベルを見せたという評価は、西谷やヒロヤの試合で見られたような、極端なグラップリング偏重とは異なる側面を示唆するが、それでも試合全体としては、打撃による圧倒的な支配やKO決着には至らなかった。   


JTTパフォーマンス総括:「突進トップチーム」のレッテル

ファイター (所属/関連)

対戦相手

階級

結果

決着方法/勝因

ラウンド/時間

出典例

朝倉 未来 (JTT)

鈴木 千裕

66.0kg

◯ 勝利

TKO (ドクターストップ: カット)

3R 3:03


西谷 大成 (JTT)

萩原 京平

66.0kg

⚫︎ 敗北

KO (スタンド打撃)

1R (不明)


ヒロヤ (JTT)

篠塚 辰樹

57.0kg

◯ 勝利

TKO (グラウンドでの肘打ち)

1R (不明)


秋元 強真 (JTT)

高木 凌

66.0kg

◯ 勝利

判定 (3-0)

3R 終了


   

※KO/TKO時間は情報源により若干の差異がある場合があります。西谷、ヒロヤのKO/TKO時間は明確な記載が見当たらなかったため「不明」としています。公式記録 ではヒロヤのKO時間は1R 2分52秒とされています。朝倉のTKO時間は  の3分3秒を採用。


表を見ても明らかなように、JTT勢の勝利(朝倉、ヒロヤ)は、グラウンドコントロールやグラウンドでの打撃が決定的な要因となっている。唯一の敗北(西谷)は、タックルを切られた後の打撃戦で喫したものだ。秋元は判定ながら総合力を見せたが、チーム全体として見れば、グラウンドへの依存度が高い傾向は否定できない。

これらの結果は、「TTT(突進トップチーム)」という批判に、一定の妥当性を与えるものと言えるだろう。打撃での決定力不足、あるいは打撃戦を避けるかのような戦術選択は、JTTが真の「日本のトップチーム」として認められるためには、克服すべき課題なのは明白だ。特に、本当に国際的な舞台での成功を目指す上では、より完成度の高い打撃スキルと、打撃戦を厭わない戦術的な幅が必要とされるだろう。



  1. 渇望される流血戦 – 打撃の激闘はどこへ行ったのか?

ファンの叫び:「男らしい殴り合いが見たい」

「血が飛び交うような激しい殴り合いが、みたい。男らしく殴り合う気迫ある戦闘が。」 「寝っ転がって遊ぶのは夜、女とすればいい、男同士が寝っ転がってごちゃごちゃしても、盛り上がらないし、見ていて飽きる。」


これは、一部のファン(特に、俺)が抱く、総合格闘技への赤裸々な欲求である。MMAにおいてタックルやグラウンドワークが有効かつ正当な戦略であることは認めつつも [User Query]、彼らが本能的に求めるのは、スタンドでの激しい打撃の応酬、魂と魂がぶつかり合うような殴り合いなのだ。今回の「RIZIN男祭り」で、特に注目度の高かった朝倉未来、西谷大成、ヒロヤの試合は、残念ながら、この種のファンの渇望を満たすものではなかった。朝倉の勝利はグラウンドでのダメージ蓄積によるドクターストップ 。ヒロヤの勝利は一方的なグラウンド&パウンドによるTKO。西谷に至っては、打撃でKOされるという、望まぬ形での打撃決着だった。


グラウンド偏重の現実と失われたカタルシス

もちろん、大会全体を見れば、打撃による鮮やかなKOシーンも存在した。新フェザー級王者となったシェイドゥラエフはクレベルを打撃で秒殺KO 。朝久泰央はウザ強ヨシヤをハイキックで沈め 、上田幹雄はシビサイ頌真をローキックで戦闘不能に追い込んだ 。萩原京平も西谷を打撃でマットに沈めた 。   


しかし問題は、多くのファンが注目し、物語性を期待していたであろう朝倉未来やJTT勢の試合において、グラウンド主体の展開が色濃かったという点にある。MMAの魅力は多様な技術の交錯にあるが、コントロールを主眼としたグラウンドワークが延々と続けば、それは一部のファンにとっては退屈な時間となり、「見ていて飽きる」という感想につながる。打撃戦がもたらす一撃必殺の緊張感や、流血を伴う激しい打ち合いが生むカタルシスが、これらの主要な試合では希薄だったと言わざるを得ない。


MMAにおけるエンターテイメントの在り方は主観的であり、高度なグラップリングの攻防に魅力を感じるファンも多い。しかし、RIZINがより幅広い層にアピールし、熱狂を生み出すためには、打撃戦を好むファンの欲求にも応える必要がある。特に「男祭り」と銘打つのであれば、なおさらである。主要カードにおけるグラウンド偏重の傾向は、結果的に、一部のファン層との間に「エンターテイメントのミスマッチ」を生じさせてしまったのではないだろうか。



  1. 岐路に立つRIZINとJTTへの厳しい視線

「RIZIN男祭り」は、東京ドームという大舞台で開催され、多くの話題を提供した一方で、その内容、特に一部の主要ファイターの戦い方については、厳しい目が向けられる結果となった。


朝倉未来の復帰戦勝利は、戦術的には評価されるべきかもしれないが、グラウンドコントロール主体の展開とドクターストップという結末は、打撃戦を期待したファンにとっては消化不良であった。(ブレイキングダウンの代表、路上の伝説ともあろう人間が、殴り合いを避け、タックルを使って計算的に体力を削りコントロールする試合は、格闘技にわかファンや朝倉自身のファンは騙せるかもしれない。だがそんなのは漢気でもなければ真の闘いでもない。俺が見たいのは喧嘩だ。散々「試合決定で」と持たざるものを喧嘩させておいて、自身は喧嘩できない、笑わせる。笑)


そして、朝倉が率いるJAPAN TOP TEAM(JTT)勢のパフォーマンスは、「日本のトップチーム」という看板に疑問符を付け、「TTT(突進トップチーム)」という揶揄に真実味を与えるものであった。勝利した試合(朝倉、ヒロヤ)はグラウンドでの決着であり、敗北した試合(西谷)では打撃の脆さが露呈した。秋元の判定勝利は総合力の片鱗を見せたものの、チーム全体として、グラウンドへの依存度の高さと打撃での決定力不足という課題が浮き彫りになった。RIZINという国内のリングでは通用する場面もあるかもしれないが、このスタイルで世界の強豪と渡り合うには、まだ多くの課題が残されていると言わざるを得ない。


RIZINは、そのエンターテイメント性において、常にファンの期待と向き合わなければならない。高度な技術戦もMMAの魅力だが、多くのファンが本能的に求めるのは、やはり激しい打撃戦が生む興奮とカタルシスである。特にスター選手がグラウンドコントロールに終始するような試合が続けば、それは団体の魅力そのものを損ないかねない。


今回の「RIZIN男祭り」は、RIZINとJTTが、今後の方向性を真剣に考えるべき岐路にあることを示したのかもしれない。ファンや人間が真に渇望する「男らしい殴り合い」、その気迫ある戦闘を、今後どれだけ提供できるのか。それこそが、日本の総合格闘技が再び熱狂の中心となるための鍵となるだろう。



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